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横浜家庭裁判所 昭和41年(少)6391号 決定 1966年9月21日

少年 D・R(昭三〇・九・二三生)

主文

本件を神奈川県川崎児童相談所長に送致する。

神奈川県川崎児童相談所長は、教護院において昭和四三年九月二〇日までの間に必要に応じ、通じて二〇〇日間少年の行動の自由を奪い、またはこれを制限するような強制的措置をとることができる。

理由

一、少年は、昭和三九年一二月、小学校三年生当時に近所での現金空巣狙い盗の非行があつて横浜児童相談所に通告され、以来、同相談所及び神奈川県川崎児童相談所において一時保護を主とした保護措置がなされて来た。

二、しかしこの間にも少年の家出浮浪、窃盗の非行は繰り返され、本年に至つては、新幹線、急行寝台車で大阪方面へ遊びに行き、七月八日以降は全く家庭に寄りつかないなど、その行動範囲は拡大し、浮浪期間も長期化の傾向を強めている。

三、少年の非行は主として現金目当ての空巣狙い盗であり、家出浮浪中の生活費、遊興費として費やされ、今回保護された際には家出中でありながら真新しい衣服を着用し着替えた古い衣服は惜気もなく捨ててしまつており、衣服を気にし、新幹線に乗つたり、映画、動物園へ行つたりすることに興味を示し、享楽的なものに強い関心を持つている。

四、少年の家出の原因は、継父との軋轢にあると思われる。

少年は、キャバレー勤めの母、姉と共に生活していたが、五年前継父が半ば押し掛けのようにして母と同棲し、このため少年ら姉弟は母の知人○木○男方に預けられたこともあつた。継父は少年と同居するようになるや、飲酒して兇暴性を発揮し、愚痴つぽく少年に当り散らしたり、弁済のあてのない生活上の借財を重ねて詐欺で三回も勾留されたりで、少年にとつては家庭が安住の場でなくなつた。このため、少年が家庭から逃避し継父に対する暗黙の反抗として家出が繰返された。そして少年が家出すると継父の愚痴は以前にも増して少年に向けられ悪循環が反復され軋轢がこうじる結果となつている。

五、保護者は少年の施設収容、矯正教育を望み、この間に継父との関係を清算して少年の落付ける家庭を作ることに積極的意志を持つているが、家庭環境の改善は早急には困難である。

以上の点を総合すると少年を開放的な施設で教育するのはもはや困難であり、少年の教育のためには逃走を防止するための強制的措置をとることもまた止むを得ないものと認められる。

よつて少年法第一八条第二項を適用し、主文のとおり決定する。

(裁判官 寺田明子)

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